最初は紙にプリントして額装してって思ってたんですが、せっかく自由に表現を楽しめるイベントなんだから、今まであんまりやったことのない方法をとりたいと思ってコラージュにしました。ここ10年くらいのうちに旭岳で撮った写真を50枚くらい用意したんですが、何枚使おうとか、どの写真をどこに置こうとか、そういう細かいことは一切考えていませんでした。プリントを持ってノマドに来て、展示する壁を見て考えたのは、全体を山の形にすること。だから一番上には旭岳の頂上の写真をレイアウトして、一番下にはロープウェイの駅舎で撮った写真を置きました。それから、山の中にはいろんな風景や楽しみ方があるなぁって思いながら、滑りや風景を、インテリアや積んである薪に合わせて思いつくままに散りばめました。その意味では完全にライブで作り上げたコラージュです。
今回の作品はすべて布にプリントしています。モノクロ写真を布にプリントすると反射がなくてぬめっとした質感になる。そのシャープすぎない何とも味のある風合いで、雪の柔らかさやシーズンが近づいてるなっていう妄想状態の頭の中の風景、みたいなものを表したかったんです。
たとえば僕自身、この中で好きなのは旭岳を滑り終わってロープウェイ乗り場まで続く「おかえりコース」って呼んでる圧雪路の写真なんですが、それは自分で滑ってる時に撮った写真です。今の良かったからもう一本行こう、ダメだったからもう一回行こう。結局もう一回なんですけど、いろんな感情を複雑に抱えながら滑る場所だけに、この写真を見ると冬の旭岳のことを思い出してすごく楽しくなるんです。
今回の展示は個々の写真よりも、全体から山の空気を嗅ぎとってもらえたら嬉しいです。あとは自然と近くに寄って見ちゃうと思うんで、その中から自分の好きな風景や、スキーヤー・スノーボーダー、その滑り方やラインなんかを見つけ出してもらえたらと思います。写真の中には滑り出す前のまだ誰も滑ってない面や地形を意識的に混ぜ込んでいます。そういうシーンも、自分ならここ行くなって妄想したりしながら、いろいろ頭の中で遊んで楽しんでもらえると嬉しいです。
滑り手たち:土井隼人、中井孝治、吉田啓介、中川伸也、吉田 "デカチョー" 尚弘、本村勝伯、福山正和、石川健二、田原 "ライオ" 勝也、橋本貴興、山内一志、浅川 誠、井山敬介、餌取 浩、入江正章、松井克師